ワールドコン・レポート

 fuchi-komaです。

 日本で初めて、且つアジアで初めての世界SF大会Nippon2007に行ってきました!
 五日間の出来事を時間順にレポします。

●一日目(8/30)
 平日なので、オープニング以外にめぼしい企画もない、ウォーミングアップの日。


 外から見た会場。右に見える「会議センター」が舞台。


 受付も日本と海外で別。

 会場に到着したら、まずはファンジンアレイの準備です。

 上から見たファンジンアレイ。



 会誌の並んだ風景。

 今回は京大SF研、名大SF研さんと合同運営をさせていただきました。
どうしてそうなったかと言いますと、当会の参加者だけで運営すると会員はずっとファンジンアレイに居なくてはならない、でも企画みたいなあどうしよう、と思って他大に呼びかけてみたところ、好意的なレスをいただいたのです。応じてくれた京大、名大SF研の方々に感謝いたします。
 会誌は上の三大学のものを販売しましたが、さらに、法政大SF研、明星大SF研の方にも運営を手伝っていただいたので「大学SF研連合って書いておけば良かったんじゃね?」という意見もあったりしました(笑) いや、ファンジンアレイにブースをとるのは無料だったのでとりあえず申し込みはしておいたのですが、まさか現役の大学SF研がウチだけだとは思わなかったのですよ(笑)

 この時点で、ウチの新刊はまだ「鋭意製作中」。


 夜7時〜オープニングに行きました。







 オープニング・アニメは、アマチュア製作にしてはロボットのクオリティが異様に高く、人物や背景とのミスマッチが楽しかった。
 どんな展開になるかとハラハラしているところに、あのオチは見事でしたね。



 挨拶で最初に笑いをとったのは、人力車で登場して「エコ・環境問題を考えて、これから公用車はこれ(人力車)にします」と宣言した横浜市長
 なんとこのネタで暗黒星雲賞を受賞したようです。

 そして、あの麻生太郎氏から祝電が入ったときは会場(の日本人)が沸きました。
 なんでも麻生氏は野田大元帥の従兄弟なんだそうで?


 実行委員長

 GOH小松左京御大

 GOHデイヴィッド・ブリン

 GOH天野喜孝

 GOHマイケル・ウィラン

 GOH柴野拓美 (敬称略)

 ゲスト・オブ・オナー(GOH)挨拶では、デイヴィッド・ブリンの「ヘンなガイジン」発言が最強でした。ブリンといいマイケル・ウィランといい、挨拶なのにちゃんとエンターテインメントしてるのがエラい。ブリンはカリスマ・オーラでてましたね。対して日本人は実行委員長をはじめ真面目な感じでしたが、老人力を発揮しはじめた小松御大と、“I'm a crazy Japanese”でブリンへ返歌を送った天野さんはちゃんと笑いをとっていたので、どうやら場慣れの問題のようです。ファンGOH・柴野拓美さんの登場に、会場はスタンディング・オベーション。挨拶では、感無量といった面持ちで「日本のSFがここまで育ってくれて嬉しい。今は人生で最高に幸せです」なんていうものだから、こっちまで涙ぐんできちゃうじゃないですか。浅倉久志さんと似た雰囲気をもってらっしゃる柴野さんは、ギラギラ輝くようなブリンとは違って、なんというか仏さまみたいなオーラだしてましたね(失礼)

 通訳と進行の不手際で、若干もたついた感じはありましたが、楽しかったです。


●二日目(8/31)

 ファンジンアレイにいる以外では、Aホールにあるエキシビションとディーラーズを巡りました。

 ディーラーズの様子。

 ワールドコンなのだから海外の出版社もたくさん来てるのだろうと勝手に思っていたのですが、そうでもないらしく、原書がちょっとしか見られなかったのは残念でした。

 エキシビション。fuchi-komaの所属するSFファン交流会の展示。
 SFマガジン06年オールタイムベスト(ATB)SF上位25作品の紹介文(日本語・英語)つき書影を並べました。
 日本の方、海外の方に足をとめて話題にしてもらえたのが嬉しかった。


 企画では、チャールズ・ストロスの出るという「プロメテウス賞授賞式」に行きました。


 混雑してるかな、と思って部屋に行ったら10人くらいしか居ませんでした。あ、人気ないんだ? 面白そうなのたくさんやってる時間なので仕方ないけど。

 最初にプロメテウス賞の説明があって、チャールズ・ストロスのGLASSHOUSEがノベル部門を受賞です、チャーリーどうぞ。で、受賞の挨拶。

 プロメテウス賞受賞でにっこりストロス。

 ストロス、喋りはやや聞き取りづらいです。話し始めると、だんだんAccelerateしていって、けっきょく20分くらい誰にもツッコミも入れられないまま独りで話して挨拶終わり。
 きっと質疑応答で活発な議論が交わされたのだろうと推測しますが、ほとんど聞き取れないマシンガンイングリッシュをただ聴いているのはある意味では拷問に近く、30分ほどで退出。無理矢理誘った友人は「気絶しそうだった」そうで、ちょっと反省。でも私は楽しかったな。聞き取れなくても雰囲気は味わえたし、その作家の感触みたいなものが分かったので。
 話の内容はGLASSHOUSEでやったこと試みたこと、だったと思うけど、ジョン・ヴァーリイジョン・ヴァーリイという言葉しか覚えてません(笑) あと、何度説明されてもやっぱりプロメテウス賞と言うものが分かりません。難しいんですよ、なんか。

 ちなみに、ここでのヒアリングの難度というのは、SFセミナーの本会に出演されていたジーン・ヴァン・トロイヤーさんやグラニア・デイヴィスさんとの比較になるので、本当はたぶんそんなに聞き取り辛い方ではない、ような気がします。

 夜はid:catalyさん主催の若手SFファンの飲み会に参加させていただきました。
 当会からは、ほかに(広)と(米)が参加。
 お世話になりました。
 お会いした他大の方、これからも我々と仲良くしてくださると嬉しいです。
 
●三日目(9/1)

 fuchi-komaはSFファン交流会主催の企画で司会をやりました。
(司会だったので写真画像なし)
 主に、SFのカバーイラストと紹介文(日本語・英語)のスライドを見ながら、ゲストの新城カズマさん(作家)、小浜徹也さん(編集者)にコメントをいただく企画でした。参加者は日本人50名超、海外の方が数名。原書と日本版のイラストどっちが好き? という質問で参加者に挙手させるなど、言語に頼らないよう工夫してみましたが、飛び入りの優秀な通訳さんによって、またゲストのお二人が日本語・英語を切り替えて話してくれた結果、「なんちゃってバイリンガル」の予定が、ちゃんとした「バイリンガル」企画になっていたとの感想をいただきました。とりあえず海外(アメリカ?)では『ソラリス』は全然知られていないし『夏への扉』はハインラインの代表作ではない、という言質をとれたのが収穫だったかと思います。

 そして、ヒューゴー賞授賞式


 今回の大会で、いちばん印象的だった企画は、ヒューゴー賞授賞式かもしれません。
 まず司会のお二人ジョージ・タケイ大森望さんの、かけあい漫才をやりながらの進行が素晴らしかった。とくに舞台の両端でタケイさんが英語の原稿を、大森さんが日本語の原稿を読み進めていたところ、途中から言語が逆転(!)してしまって「おやおや、原稿の一部が逆にはさまっていたようですねえ」とぼやきながら二人が舞台中央で原稿を交換するシーンは傑作でした。lainと英利政美みたいで最高。ああ、あのシーンだけでもようつべに上がらないかなあ。
 これは聞きかじりですが、ヒューゴー賞のセレモニーはアカデミー賞授賞式を模しているそうです。たしかにヒューゴー賞でのタキシードやドレスを来た人が壇上に上がって、スピーチで感激をあらわにするところなんかは、いかにもそれらしい。日本SF大会星雲賞の授賞式とは雰囲気から違って本格的でしたね。まあ星雲賞のまったりした空気もfuchi-komaは好きなのですが。
 ところで、ヒューゴー賞のトロフィーというのはいつも同じロケットの形をしているのですが、台座は開催地が特別に作るのでその土地の特色がでるのだそうです。そして今回Nippon2007はというと……なんとウルトラマンでした。



 wwちょwww円谷自重wwww
 そもそも授賞式の開始もウルトラマン・ショーで始まってましたし、誕生40周年ということでエキシビションにもウルトラマンが来ていたのでまさかと思いましたが…。まあ楽しければ何でも良いか。

授賞式でもコントやったり大活躍だったウルトラマン乙。


●四日目(9/2)
 自分の企画が終わって解放されたので、自宅でファンジンの新刊ASOV36.75を作っていました。

 この日は星雲賞授賞式、テッド・チャンのインタビュー、チャールズ・ストロスのサイン会に行きたかったですね。
 チャンのインタビューはウェブ上にかなり詳しいのがうpされているので、興味のある方は検索すると吉。


●五日目(9/3)
 最終日です。


 早朝に新刊ASOV36.75が完成。

 クロージング以外では、「特異点の描き方」が気になりましたが、後輩の(広)にASOV36.75の印刷を頼んで、自分はエキシビション企画の片付けをしていました。

 さて、ASOV36.75は、結局間に合ったのでしょうか?
 12:00で閉鎖されるファンジンアレイに、新刊を携えた(広)が走り込んで来たのは、なんと11:59! 嘘みたいですが本当の話です。その場で「新刊あがりました!」と叫び、待っていてくださった5,6名ほどの方に買っていただけました。

落ちてしまったASOV37については、(広)がお詫び特設ページを作ってくれたので、そちらを参照のこと。

ほぼ落ちてしまったと言えるASOV36.75については、後ほど別項で触れる予定です。

 クロージング

 暗黒星雲賞の月曜部門はブリン。またもや挨拶がウィットに富んでいて素晴らしかった。そしてさようなら。また会える日を楽しみにしています。
 ゲスト挨拶の印象は、わりとオープニングとかぶるので、割愛します。
 最後に次回ワールドコン、Denvention(開催地デンバー)の宣伝。






 ふーん、Guest of Honor作家はビジョルドかあ、『コラプシウム』のマッカーシイもいるのね……えっ? ロバート・A・ハインライン? 死んだ人がなんで、と思ってよく見ると、「Ghost of Honor」になってる(笑) かつてデンバーで最初に開かれたワールドコンのときのゲスト・オブ・オナーなんだそうです。こういうユーモアっていいなあ。

 Nippon2007のレポはこれでおしまいです。
 最後に総括めいた感想を。
感想

 実行委員会の準備と進行については、各所で言われているとおり、やはり少なからぬ問題があったと思いますが、個人的にはSFを満喫できて、とても楽しめた五日間でした。

 自分は大学でSF研に入って、それから寝ても醒めてもSFのことばかり考えていました。在学中にワールドコンに参加できたというのは、本当に一生の思い出になるでしょう。柴野さんではありませんが、これまで生きてきた中で、一番しあわせな時間だったかもしれません。

 家に帰って、このレポートを書きながら、あれが本当にワールドコン・世界SF大会だったのだ、という実感がようやく沸いてきました。有料入場者数は公式発表で5138人だそうです。そんなにたくさんの日本と世界のSFファンがお祭りをやったのですね。いまだに信じられません。

 ワールドコンNippon2007、お疲れ様でした。
 一緒に遊んでくれたSFの方々、ありがとうございました。

P.S あまり遊べなかったらしい(広)、ぜんぶが私のせいじゃないけど、私も悪かったと思ってるので、この埋め合わせはするよ。期待してて。

(fuchi-koma)