涼宮ハルヒの憤慨

涼宮ハルヒの憤慨 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憤慨 (角川スニーカー文庫)

ハルヒシリーズ第八巻。
タイムトラベルもしない、セカイの危機もおとずれない、わりとのんびりとした巻です。


「編集長★一直線!」
SOS団と生徒会長の直接対決! といっても予定調和なので、その部分はあまり盛り上がりません。
ここにおいて長門の所属する文芸部が、はじめて存在証明をされたような気がします。あ、本当にあったんだ。という感じです。

団員が原稿を書くのに悩むシーンやせっかく書いた原稿を鬼編集長(もちろんハルヒ)に改変されまくるシーンは、同人誌を作ってコミケ文学フリマで売っている我々のような人間にとっては身に染みるというか、胸が痛まずには読めません。

原稿の中にはキョンの過去恋愛話が明らかになる重要なエピソードもあります。
ここでの「読者諸君に挑戦!」的な叙述トリックは、どれくらいの人が見抜けるのでしょうか? 私は見事に騙されました。あなたはどうです?


ワンダリング・シャドウ
先の一編は日常描写の中にミステリ的な楽しみがありました。
対してこちらでは珪素構造生命体共生型情報生命素子というものが登場し、作品の宇宙的広がりを思い出させてくれます。
SF読者の期待も裏切らないのです。

あと、長門の「禁則事項です」にはやられましたね。
めがっさいいよっ! 有希っこ!!


全体として何となくぬるく、にょろーん。と読めてしまう本巻は、波乱の次巻へむけての休息といった位置づけでしょう。


(fuchi-koma)