SFセミナー2007・レポ(合宿篇)

一昨日の本会篇に引き続き、SFセミナー合宿のレポートを掲載します。

合宿は同じ時間にたくさんの企画が同時開催されていますので、ここからはfuchi-komaの行動の経路に沿って、レポします。
多くの参加者とはわりとかけ離れたものになっちゃっているような気はしますが、ご容赦を。


オープニング

例年どおり、オープニングにて作家・評論家・翻訳家・書評家・編集者などプロの参加者が紹介されました。


一コマ目
まず「ロボットアニメに乾杯!」を覗く。ロボットアニメ系のアニメ映像をばーんと流しつつ、会場のあちこちから茶々が入って、それをゲストの島本さんが受け返す、もしくは会場の参加者同士で肴にし合うという感じがありました。ちらと覗いて、次へ。

つぎに「世界文学を語る部屋」を覗くと、牧眞司さんが、「人間が描けてない」という主張の阿呆らしさについて、自然主義文学の代表とされる田山花袋に言及しながら、痛快に切っておられました。少し滞在して、次へ。

「「奇想天外」についてもっと話そう」昨日も触れましたが、まったく読んでいないので、なんとなく恐くて、入れず。

「ハヤカワJコレクションの部屋」人がいっぱいで入れず。第三期のラインナップに入っている円城塔さんの『Self-Reference ENGINE』が章ごとに分割されて配られたらしい。会場のあちこちで断片を見かけました。本書の惹句は「レムの論理にヴォガネットの筆致」らしいですよ! なんて恐ろしい! 「バッター・イン・ザ・ライ」の話も聞きたかった!

2コマ目の準備のために広間に戻ると、名大SF研の方がディーラーズの準備をしておられた。アメコミ・レビューの掲載された会報『Milk Soft vol.154』を買うと、持参のアメコミを薦められる。楽しそうでしたが、時間がなかったのでニール・ゲイマン原作のをちら読みした程度で作業に戻りました。


2コマ目
fuchi-komaの主催するSFファン交流会の出張版企画「あなたの本棚の物語〜あなたに教わる書籍整理術」
本読み学生から、蔵書家と呼ばれるような方まで、それぞれの本棚写真をプロジェクターで次々に投影し、本人の解説で、どのようにして現在の本棚ができあがったか、蔵書整理のちょっとした工夫などを伺いました。fuchi-komaなりにまとめると、以下の三つの典型タイプが見出せました。
一つ目は、「本棚を磨く」タイプ。いらない本を小まめに処分することで綺麗に整頓された本棚は、見た目は美しく、本を探すのは楽だが、そのぶん手間がかかります。整理する手間が楽しく、本を処分することを厭わない人のタイプですね。
二つ目は、野積み、ダンボールを多用し、とにかく積み上げるタイプ。テレビは見えなくなって当然。家具は動かせなくて当然。どこに何があるかは、メモをとって分かるように対応する人がいたり、記憶に頼る人もいましたが、「捜しません!」の男気溢れる言葉を残した印象的な方もいました。
三つ目は、設計タイプ。レビュアーの風野春樹邸は、最初から設計して14畳の本部屋を造り、可動式本棚を設置。本を溜め込む質の人にとっては理想型かと思われました。しかし、当然ながら引越しの苦労があって、さらにあと2年くらいで書架がいっぱいになってしまうだろうという心配があり、その後のことを伺うと、風野さんは、考えたくないといった様子でした。
最後に牧眞司邸が登場しましたが、ここも設計タイプで、改築による拡張を実行中のようです。「本を買う金の10分の1は収納のために使え」「5000冊を超えるあたりで、決断を迫られる。本を処分して人間的な生活をするか、処分せずに非人間的な生活をするかだ」などの名台詞を残されました。



3コマ目
「おーい、星新一」「ヒューゴー賞候補作紹介」など、どの企画も気になりましたが、結局どの企画にも行かず、広間にて若者と雑談に興じておりました。セミナーゴロが板について来たかな(汗
何の話をしたかあまり覚えていないのですが、アメコミスキーの名大SF研の方と京大のラノベスキーの方に、山田正紀ジャグラー』がいかに面白いかを説いていたことは覚えています。

ジャグラー (徳間デュアル文庫)

ジャグラー (徳間デュアル文庫)


4コマ目
もちろん「今昔大学SF研諸事情」に行きました。
20歳前後の若者がたくさんいて、こんなに居たのか、と驚きました。
現役生が参加していた大学サークルは、東洋大学京都大学慶応義塾大学、東京大学名古屋大学東北大学SF推理小説研究会SF・ライトノベル部会のSF研、東京大学新月お茶の会ワセダミステリクラブ、でした。(漏れていたらすみません。ご指摘くだされば訂正します)
司会のタカアキラさんとゼラ泉座長がナチュラル漫才をしながら進行し、これらのサークルが新歓をどのようにしているか、そのマニュアルや工夫を聞き出しました。大学サークル同士のやり方はもちろん、OBが手本を見せて現役生が感心する一幕もあり、この部分だけでも大いに参考になりました。
さらに、立命館大学明星大学、法政大学といった現在SF研の存在しない大学からも参加者がおり、このうち明星、法政の両大学では現在、SF研を創設しようという動きがあるそうで、設立のために奔走する現役生へ、どうしたら人を集められるか、精神論と具体案が入り混じる、わりととりとめのない討論が行われました。

最後のコマだったので、大学SF研部屋は、そのまま深夜3時くらいまでえんえんと議論し続け、ようやくお開きになったと思った頃、自然発生的に5コマ目が登場しました。


5コマ目
は、旧田中邸ゲーム*1
さて、この5コマ目がめちゃくちゃ面白かったので、少し詳しく書きます。
ゲームのルールは簡単。

  1. 参加者で円座を組む。回答者は始点から時計回りに移っていく。
  2. 回答者は、参加者のうち●人が読んでいると思われる作品名を挙げる。
  3. 2を受け、読んでいた人間は挙手する。
  4. 読んでいる人間が●人ピタリであった場合、回答者は拍手(場合によっては景品)がもらえる。

というものです。
この●人の部分は、最初は0か1で始まり、回答権の移るごとに1ずつ増えていきます。最大値は参加者の人数によって変動します。今回は最大時で25人くらいが参加していたので、最大値は20でした。20の次は、0か1に戻ります。

あなたの人生の物語」や『マルドゥック・スクランブル』『アンドロ羊』はほぼ全員が読んでいたのに、フランキー『東京タワー』が1人、『一瞬の風になれ』が0人とは、なんとも偏った読書人が集まったことです。とはいえ、聞いたこともないような書名もたくさん出ており、自分の読書量の少なさと幅の狭さを反省させられる体験でした。

このゲームの面白さは、ピタリを当てる戦略性と、意外な人物が意外な作品を読んでいなかったり読んでいたりするところなのですが、実際にやってみないと分からないような気もします。
あまりの面白さに、窓から陽光の指す時間まで、多くの方がぐったりしながら、ゲームに興じていました。

そして、ほとんど寝ずに、そのままクロージング。
SFセミナー2007が幕を閉じたのでした。

退屈する瞬間は、まったくありませんでした。

(fuchi-koma)

*1:よく分かりませんが、かつて(旧)田中邸というところで、よくやられたゲームなんだそうです。