谷川流『涼宮ハルヒの退屈』

涼宮ハルヒの退屈 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの退屈 (角川スニーカー文庫)

前二冊とは違いいくつかの短編をまとめたものとなっており時系列的には『憂鬱』から『溜息』の間に起きた話が収録されている。
最も早くに活字化された表題作『涼宮ハルヒの退屈』の他にSOS団の怪しげな背景を持つ長門、朝比奈、古泉の三人をテーマに色々な趣向を凝らしながら書いている『笹の葉ラプソディ』『ミスティックサイン』『孤島症候群』が入っているがどれも目を見張るものがある。
特に後者の作品は作者なりの時間旅行物と電脳物のSF観やミステリ観が垣間見えてとても面白かった。


読んでる内に端々に見られる表現や今度のASOVの目玉に挙げる長門百冊などから見るに作者にはかなり色々と引出があるように思われる。
それをそのまま出す事が難しいシリーズではあるがこういう本筋には関わらない話でなら様々な形で見せてくれるのではないかと期待するには充分だった。
個人的には『孤島症候群』が論理問題のように整理するだけで矛盾点が浮き上がるというとてもシンプルで見本のような本格臭のするミステリ部分が見られたのが良かった。
最近流行の叙述トリックとか無いしね。安定感がある。


しかし長門の万能性が際立って目立つ。
いくら自分からは積極的な干渉をしないというにしてもこれじゃちょっとしたドラえもんだ。
もしくは人間以上の頭とか。
相談すればとりあえず何とかしてくれる長門さんの頼りがいは異常。


(松)