エマニュエル・ドンガラ『世界の生まれた朝に』

世界が生まれた朝に

世界が生まれた朝に



サークルの一部でガルシア・マルケスの『百年の孤独』が流行ってるみたいなので、対抗してアフリカ版『百年の孤独』と呼ばれる『世界の生まれた朝に』を読んだ。


アフリカの未開の国だったコンゴが味わう苦難の歴史を、特別な力を持って生まれた原住民の子マンクンクが一代をかけてなぞっていく。
すごいのが、アフリカ奥義呪いの移り変わり。
ジャングルの奥地の原始的な部族でしかなかった主人公たちの間では、当然のように呪いが生きているんだけども、ある日ヨーロッパ人がやってきて、世界大戦が始まって機械が幅を利かせはじめて、そのうちにだんだんと呪術は意味をもたなくなっていく。最後は科学に席巻されちゃう。
だけど、科学は結局アフリカの知恵と背中合わせなんだという、マンクンクの、作者の思想。



作者のエマニエル・ドンガラはコンゴ出身。アメリカで物理学博士になって今はコンゴの大学で教鞭をとっている。本書はフランスで刊行され、ブラックアフリカ文学大賞を受賞。
訳者の高野秀行早大探検部時代に『幻の怪獣ムベンベを追え』を出版。本書の翻訳が卒論らしい。



(久)