都留泰作『ナチュン』

ナチュン(1) (アフタヌーンKC)

ナチュン(1) (アフタヌーンKC)




バガージマヌパナス』読書会の時も散々言ったけど、この漫画はおれたちの大好きな要素が詰まりに詰まってるんですよ。



2035年、自意識をもった人工知能を自分が完成させることを直感した主人公、というSF要素。
沖縄にて、水中での肺呼吸を可能にするための「人口鰓肺」をつけて、イルカの群れの行動から人工知能の理論を固めていく主人公のまわりには、SFガジェットがあふれてる。小型潜水艦だの、でっかい芋虫のような自立して泳ぎ回るプランクトン収集装置だの。
あふれてるって言うか、ありふれている感覚。
技術が決して「未来の科学」なんかではなくて、画期的技術であるはずの人口鰓肺がすんげー汚れているような、生々しさ。もうこれは技術ではなくて、漁師が生きていくための道具になってる。




沖縄の、とある小島でひそかに生き続ける邪教という、ファンタジー要素。
なんつっても第四話のタイトルが「邪教の島」ですから。
そういや先日の読書会で「沖縄はすでに邪神の生息地なんですよ!」と熱弁してた人がいたっけ。
信者の発狂は毎度のことだから気にしてなかったけど、こんなところで邂逅するとわ!
そして、巫女(ユタ)が白痴であるということの意義も読書会でやりました。事前に勉強? したことで、その必要性とか、これからの展開とか、考えの可能性とか、広がる広がる。
できればこの本を読書会に持っていきたかった。




SF、FT要素もそうなんだけど、主人公が弟子入り? する、漁師のゲンさんがまたいい味だしてるんだ。独身で、ムラっ気激しくて、それでいて、どんな感情もすぐ表に出てしまうゲンさんは、最近アフタヌーン本誌でもプッシュされてるくらいの人気者。
もちろん、女神さま的なプッシュとは正反対なんだけど。
まあ、ゲンさんのフィギュアなんて作られても、扱いに困るだけだしな・・・。



ああ、とりとめもない!
ようするに500円では安すぎるSF漫画っつーことです!



(久)