川端裕人『竜とわれらの時代』

竜とわれらの時代 (徳間文庫)

竜とわれらの時代 (徳間文庫)



いやー、長い。そしてすごい。すごい情報量。毎度の事ながら、厚く、熱い小説だ。


北陸の田舎町で恐竜の化石が見つかる。大きな体と長い首、FF6アルテマを使ってくるブラキオサウルスと同種の竜脚類の新種の化石だ。その完全骨格を巡って、主人公でアメリカの大学院生の風見大地、土着の文化に安定する弟、大地の研究仲間、教授、科学を振興する福音主義団体「財団」、イスラム原理主義団体「ファトア」ら、様々な面々が、それぞれの思惑を胸に闘うのです。


読んでいて燃えるシーンがいくつもある。科学の力を信じる教授が福音主義団体「財団」の老人たちに謁見し、科学と倫理を戦わせるゼーレな場面。主人公たち院生仲間が、恩師の確立した既存の学説をくつがえす研究発表の場面。手取の土着の信仰である竜神さまが湧き上がる場面。化石を巡る町同士の対立に登場する担当者と、協力関係にある「財団」の黒服は二人ともベースボールに未練のある同士。二人のキャッチボールを通したやりとりは、敵役のくせに切なくて、それでもやっぱり熱いんだ。


土着の「竜神伝説」から世界を牛耳ようとする「財団」まで。
科学と信仰は対立するのか、それとも共存し得るのか。


収録された二つの解説がとても親切。初版本版は国立科学博物館主任研究官の真鍋真による恐竜その他、科学面に特化した解説。文庫版解説の大原まり子は作者の紹介と本作のSFとしての側面を解説。



竜脚類
http://contents.kids.yahoo.co.jp/dino_card/list/group/02/

(久)