マイケル グレゴリオ『純粋理性批判殺人事件〈下〉』

純粋理性批判殺人事件〈下〉 (角川文庫)

純粋理性批判殺人事件〈下〉 (角川文庫)

本日は読書会、総会参加者の皆さんお疲れ様でした。
今日話した冬コミ販売予定の次のASOVの事を部員全員念頭に置いてて下さいね。


この前途中で書いたものの下巻なのだが、すっかり読むのを忘れていてしまった。
ようやっと読み終わったのであるがタイトル見て買って読みながら期待していたものと内容のズレが大きいのが原因で凄く損する本だと思う。
確かに最後の方にある道徳哲学と殺人行為との関連の考察は面白いと言えるがそれでも些か稚拙な解釈を軸に展開しているという風に読めてしまったので少々興ざめであった。
ただそんな事は私のカント理解と違うっていうだけで大した問題ではない。
期待の新人と宣伝されるだけあって伝播する狂気という描写の書き方はとてもよかった。
舞台をケーニヒスベルクだけの狭い世界だけで行うのではなく殺人事件のそもそもの発端であるフランス革命のルイ16世の処刑からカントによる思想化に至るプロセスを書いた方が当時の背景を踏まえた歴史哲学小説として読めたと思う。
精神を病んだのとは違う、思想としての狂気というものを書いたというのは珍しい。
要所要所にフランス革命以後波及した自由主義思想とナポレオンに対する恐怖という歴史背景を書いているものの取ってつけたようであったのが残念だった。


一番納得いかないのはタイトルだね。
殺人事件っていうけどこれは違うよ。
原題を直訳して犯罪理性批判とするのが一番しっくりくる。
タイトルとあらすじはインパクト重視に書くのだとは分かっていても紹介文も酷い。
カント探偵しないしね。