アルフレッド・ベスター『ゴーレム100』

ゴーレム 100 (未来の文学)

ゴーレム 100 (未来の文学)

本作を読んで、『分解された男』から考えると、かなり下品で狂った方向に進化してきていたのだな、と思った。
ストーリー的には、ゴーレムの正体を暴くことを中心とした、割と単純なものだ。しかしその単純なストーリーの器に盛り込まれた、さまざまな下品で薄っぺらく、なおかつ狂っていて実験的なモノの量がハンパじゃない。
狂った言語遊戯が炸裂し、キャラクターたちが狂乱して動きまわって、場面がガチャガチャになる後半が好きだ。ワイドスクリーン・バロック的に見るなら、後半のバロック感はもう、最高峰だろう。
数ページに渡ってひたすら赤ちゃん言葉で話し続けるシーンのどうしようもなさは、只事ではない。
最後の方の「〜男だ!」っていうのが列挙される場面の、「悪臭男」とか「宇宙男」とか「ジェット男」とか「パワー男」とかいう安直なセンスは、結構、好みだ。
正直、マニア向けの作品だと思う。SF好きじゃなくても、小説マニアの方は楽しめると思う。


(鈴)