スティーヴ・エリクソン『黒い時計の旅』

黒い時計の旅 (白水uブックス)

黒い時計の旅 (白水uブックス)

かなりのエネルギーと密度を感じさせる作品だった。先の展開はあまり考えず、その都度その都度、各場面の描写に全力を注ぎこんで書いている感じ。ページ数的にはそこまで長い作品という訳ではないけど、読み終えて、長い長い作品を読んだなぁと感じるものがあった。
作品内で書かれているイメージや描写に、読み手としてあまりうまく呼応できない感じがあった。感性がにぶっているのかもしれない。何年後とかに読み返したら、また違った感覚で読める気がする。
好きなシーンがあって、ヒトラーのためにポルノ小説を書いている男が、ヒトラーの子供をつくるシーン。あそこはよかった。一番幻想的なシーンだった気がする。やっぱりリアリズムは好きじゃないのかなぁ。

(鈴)