村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)

初春樹。
これと『ノルウェイの森』を同時に読んだのだがどちらもちゃんと読めた事が意外だった。
村上春樹に対して妙な偏見を持っていたのかもしれない。

ノルウェイに比べてこちらは変な事の起きる変な世界のためか、はたまたそんな世界だから奇行が目に付かないためかイライラしたり本を投げつけたくななる事はなかった。
特に世界の終わりの方の不自然さ、違和感の描き方は幻想的で楽しかった。
一つ一つの情景描写、奇行を読む時はとても面白いと思うのだが流れの展開自体は度し難く、この本だけでは世界の終わりとは何かとか何が起きているのかという事は明確に説明されずにいる。
世界の終わりは成長以後と成長以前の二種類であり、結局これも大人への通過儀礼を象徴的に書いた作品であるという解釈でいいのだろうか?
そうすると登場する様々なガジェットは全て暗喩のための材料以上のものではなくなるわけで、勿体無いと思ってしまう。
貧乏性なんだろうな。