朱川湊人「都市伝説セピア」

浪漫を解するには俗過ぎて、現実を見るには夢見過ぎる。
だから、どうにもままならない。どうにかする気がないクセに。
 
さて、今週の一冊。

都市伝説セピア (文春文庫)

都市伝説セピア (文春文庫)

タイトルの響だけで選択。
そしてタイトルにぴったりの短編集。ジャンルは幻想ホラー。
収録は以下の5作品。
アイスマン/昨日公園/フクロウ男/死者恋/月の石

アイスマン」は田舎でおきた残酷なボーイ・ミーツ・ガール。
「昨日公園」は過去に友達を救えなかった父親とその息子の話。
「フクロウ男」はある都市伝説が生まれ、消えるまでの物語。
「死者恋」は死んだ画家に恋をした女のお話。
「月の石」は未練に囚われた男の顛末。

それぞれの話はどれも、救われない話だけれど何処か、心安らかにになれるお話。
他人から見たら狂気かも知れないけれど、当人達にとっては大切な何かを守る為に、何かを失うような、そんなお話。
ありきたりかおも知れないけれど、怖さと悲しさと、一握の懐かしさが心地よい短編でした。
オススメは「フクロウ男」。
 
蛇足
・入手は比較的容易。図書館にも通常配備?
・旧装丁版は灰色を基調とした風景画。個人的にはこちらの方が好み。
・都市伝説…いい言霊です(ぉ
・他著に「かたみ歌」「わくらば日記」「白い部屋で月の歌を (角川ホラー文庫)