T.J.バス『神鯨』

神鯨 (ハヤカワ文庫 SF 312)

神鯨 (ハヤカワ文庫 SF 312)


ワイドスクリーン・ASOVの原稿を書くために読んでます。
ところで、ワイドスクリーン・バロックであるための要素としては、時空スケールの大きさ、めまぐるしい展開、情報量の多さなどがあると思うのですが、それら以外に「語り口」も割と重要だと思います。
語り口のテンションを高くしたり、言葉遊び的な要素を取り入れたり、滅茶苦茶な口語体にしたりすると、ワイドスクリーン・バロックの特に「バロック」的な面が強く際立つように思います。
そうした意味では、アルフレッド・ベスターの「分解された男 (創元SF文庫)」なんて、言葉遣いが多少古びている面がありますが、ワイドスクリーン・バロックっぽいなぁと感じました。
翻訳作品の場合、語り口が直訳的でおとなしく、工夫のない感じだと、たとえ時空スケールが大きかったりしても、いまいちワイドスクリーン・バロックっぽさを感じません。

(鈴)