ヴァン・ヴォクト『イシャーの武器店』など

イシャーの武器店 (創元SF文庫)

イシャーの武器店 (創元SF文庫)

武器製造業者 (創元SF文庫)

武器製造業者 (創元SF文庫)


ある日突然、街中に一軒の「武器店」が出現する。驚く人々。取材のため店に入った新聞記者マカリスターが立った先は七千年先の未来だった。「武器店」の人間が告げるには、「武器店」はその時代の帝国イシャーと対立する機関で、いま現在全宇宙を揺るがす危機に見舞われている、とのこと。イシャー帝国と武器店の戦闘の副作用でマカリスターは七千年の時間を超えてしまい、マカリスターの体内に宇宙を崩壊させるほどの時間エネルギーが溜まってしまったというのだ。
武器店によって宇宙の均衡を保つための時間振子と化したマカリスターは数兆年の未来を行き来させられてしまう。イシャー帝国と武器店の緊張を緩和し、マカリスターを救うため、不死人ヘドロックが立ち上がった。
というのが『イシャーの武器店』のおおまかなあらすじ。と言っても、あらすじは入り組んでいてわたしの能力では説明しつくすのは難しい。主人公?の不死人ヘドロックの活躍よりも、実は、イシャー帝国下で暮らし、武器店とかかわったことで帝国の矛盾に気付き才覚を発揮していく青年の物語が主軸となっている。そうすっと不死人や宇宙のなりたちといったスケールのでかいワイドスクリーンバロックの要素に流されるまま楽しむだけでなく、非Aシリーズに見られるような「管理社会との戦い」というテーマでも読める。
「ヴァン・ヴォクトなんかはSFのためのSFだから、どこか浅いんだよね。(このあとスタージョンを誉めていたような気がする)」という文章を何かで読んだが、これは裏を返せば最高の誉め言葉だと思う。
『武器製造業者』は不死人ヘドロックとこれまた不死の宇宙蜘蛛との邂逅の話。『武器製造業者』と『イシャーの武器店』では実は『武器製造業者』が先に書かれている。その分『イシャーの武器店』のほうがこなれてる感じでわたしは好きかな。


(久)