オラフ・ステープルドン

シリウス (ハヤカワ文庫 SF 191)

シリウス (ハヤカワ文庫 SF 191)


生理学者によって作り出された、人間に匹敵する知能を持ち、言葉を喋る犬であるシリウスの一生を書いた物語。
シリウスは犬だけど、高度な思考力を持っているし、言葉をしゃべれる。さらに人類に対して批判的な所があり、まったくかわいくない。
犬は人間よりも、嗅覚と聴覚が鋭く、一方、視覚の認識力は弱い。そしてシリウスは人間たちの感情の変化の様子を、「見る」ことによって感知するのではなく、発する匂いの変化を「嗅ぐ」ことによって感知する。
この作品の中心になる部分は、シリウスを作り出した生理学者の娘であるプラクシーと、シリウスとの関係性。シリウスとプラクシーは幼い頃から一緒の環境で育ち、特別なつながりで結ばれている。時には関係性が悪化したり、はなればなれになっても、心の奥底ではお互いを強く求め合っている。そうしたお互いの心情が細かく書かれていて、素晴らしかった。
作品全体が丁寧に書かれていて、充実した作品だった。