道尾秀介『ソロモンの犬』

ソロモンの犬

ソロモンの犬

 道尾秀介は読んだことがなく、これが初だ。日本推理作家協会賞本格ミステリ大賞など受賞しており、読みたい作家の一人だった。
 あらすじは四人の大学生の幼い友人陽介が飼い犬との散歩の途中、犬に引っ張られてトラックに轢かれて死んでしまった。なぜ犬は突然走り出したのか?なぜ幼い友は死なねばならなかったのかという内容。
 なんというかミステリーというよりミステリー風味の青春小説といった感じ。全面的に恋愛要素が強く、自分はこういった要素をあまり好まないので心底どうでもよかった。でも主人公の等身大の大学生らしさは良かった。
 ミステリーとしては物足りなかった。別に推理するわけでもなく、探偵がでてくるわけでもなく、ただ淡々と学生生活を送り、このことを切掛に犬の習性を学ぶ主人公。そして真相に到る主人公に犬の習性を教えた教授!結局、最後のおいしいところはこの教授が持っていってしまった。まぁ途中で主人公が死んでしまったと思わせる文章があるので仕方がなかったのだろうがすんなり主人公が解決しても良かった気がしないでもない。
 面白いかは別として全体的にあっさりとしていてとても読みやすかった。果たしてこの作品が「このミス」にランキングするかどうか楽しみである。
(荒)