『ゴーレム100』刊行記念トークショー

神保町の三省堂で行われた『ゴーレム 100 (未来の文学)』刊行記念トークショー[柳下毅一郎×滝本誠 ゴーレム降臨!アルフレッド・ベスターに学ぶSF史]
に行ってきました。トークショーはどんな流れで行われたかというと、
まず柳下氏が聞き役となり、滝本氏のSF体験などが語られました。ここではベスターの話題は割りと少なめだったのですが、滝本氏の語り口がおもしろく、楽しめました。特に滝本氏の編集者時代の話などがおもしろかったのです。
そして一通り滝本氏が語ったところで、なんと訳者の渡辺佐智江氏が登場!さらに若島正氏も登場!!渡辺氏はこうした場には出てこない人だと思い込んでいたので、驚きました。あと訳者紹介欄の情報が少ないことなどもあって、渡辺氏はもしや男性なのでは?とか勝手に考えていたのですが、女性でした。
そして渡辺氏、若島氏を交えてべスターやゴーレム100についての話題を話していたところで、さらに山形浩生氏が乱入!結局、5人での妙に豪華なメンバーでのトークショーとなりました。
以下に出た話題で覚えているものを箇条書きにしておきます。


・昔はディックはオシャレな作家だった。喫茶店とかでディックを読んでいると逆ナンされた。
・滝本氏が、『ゴーレム100』はイラストの部分が時間をかけずにすぐ読めるから良い、全部イラストでも良いぐらいだ、みたいな発言をしていた。個人的に、この発言が一番おもしろかったです。
ディレイニーの『ダールグレン』はわかる、わからないとかの問題じゃなくて、とにかく出ることに価値があるし、出ればみんな買う。
・若島氏は大学時代、SFを読もうと思い、SF好きの先輩に聞いたら「Aから順に読んでいけ」といわれた。しかしAのアシモフを読んだらつまらない。そこでBのベスターを読んだらおもしろくて、SF好きになっていった。なお、その後、Cのクラークを読んだらつまらなかった。結局のDのディックでやめた。
・ベスターは会話文が抜群にうまい。SF界では一番なのでは?
・『ゴーレム100』2500円は安すぎ。3800円にすべきだよ。当初はもう少し高い価格設定だったが、国書の営業が無理矢理2500円にした。国書本の原価計算がどうなってるのかわからん。
・ベスターは一見、無意識的にメチャクチャに書いているように見えるが、博識で、理性的な作家。さらにベスターは文章自体や作品の形式性にこだわりがある作家であり、そうした文章や形式性を自由に書けるからSF作家になったのでは?
・ベスター作品の基本は恋愛メロドラマ。
・訳されていないベスター長編もおもしろい
・渡辺氏は『ゴーレム100』を、最後のジョイス語の所を除いて、45日間で訳した。一気に集中して仕上げた。またこれほどまでに翻訳を待ち望まれた作品を訳したのは初めてで、反応に驚いている。
・渡辺氏はベスターを読んだことはなく、今回の翻訳のために野口訳の『コンピュータ・コネクション』のみ読んだ。
・渡辺氏は原文に忠実に訳すことを心がけている。
・サンリオの『コンピュータ・コネクション』は復刊される話が出ている。しかし実現するかはわからない。
・ゴーレム100は売れている。増刷決定。
・ゴーレム100が20年前にサンリオとかで出たら、唖然とされるだけで、読者に受け入れなれなかったかもしれない。

(鈴)