レーモン・クノー『文体練習』

文体練習

文体練習


同一の内容を99通りの違った語り口、技法で示し、並べた本です。
まず一番目には「語り手がバスの車内で、男が他の乗客に文句を言っているのを見て、その後、その男が街中を歩いているのを見かける」といったような短い内容をメモとして書いています。そして2番目からは、このメモの内容を99通りの語り口、技法で書き換えていきます。わかりやすい所では、語り口を関西弁や女子高生風にしてみたり、また感嘆符を多用してみたり、必要以上に荘厳な文体で書いてみたり。メモの内容を短歌や自由詩にしてみたり、嗅覚や触覚などの五感に焦点を当てて書いてみたり。
この本を読めば、同一の内容でも、これだけたくさんの違った語り口、技法で書くことができるのか、と感嘆させらます。小説家志望や翻訳家志望の方などは読んでおくといろいろと参考になるかもしれません。
この本の素晴らしい所は、技法的に高度な事をやっているにもかかわらず、それがちゃんおもしろく、笑えるものにもなっているという所です。
200ページ未満で値段が3500円と高いですが、なんだが手許に置いておきたくなるような、所有欲を掻き立てられる本でした。