相原コージ『ムジナ9巻』


1〜8巻は前から持っていたのですが、9巻だけが見つからない。一年ほど機会があるたびに探していて、今日やっとこさ買えました。ネットで探せばすぐにでも手に入ったのでしょうが……。
卑怯な手を駆使し「いきのびる」ことだけを考える忍者ムジナと伊賀の頭首服部半蔵の死闘は、あくまでも泥臭い。生きるために闘うという『ムジナ』全巻に通ずるメッセージと、その醍醐味は、最終巻の9巻で最高潮に達する。今まで闘った敵の忍法を盗み、伊賀ものをなぎ倒し続けるムジナ。傀儡の頭首ではあったが、卍の里を思うサジ。ムジナの恋人のスズメ。伊賀忍者による卍の里の根切りから生き残った三人が迎えるクライマックスは、悲しくも明るいハッピーエンドだ。
漫画、映画、小説問わず、忍者ものをいくつか読んできたが、なかでも『ムジナ』は別格のおもしろさ。いや、忍者ものというジャンルを抜きにしても、人間同士の生身の闘いをここまで描いた作品はちょっと見当たらない。
しかし、現在は絶版。
おもしろいものを生み出すという仕事を、出版社はどう考えているのだろう。ちょっと疑問だ。


(久)