光瀬龍『失われた都市の記録』

喪われた都市の記録〈上〉 (ハルキ文庫)

喪われた都市の記録〈上〉 (ハルキ文庫)

喪われた都市の記録〈下〉 (ハルキ文庫)

喪われた都市の記録〈下〉 (ハルキ文庫)


終末から始まる物語。
20世紀末、太陽系中に広がった人類ではあったが、宇宙の圧倒的な猛威の前ではただただ無力だった。金星、火星、木星、月面の各殖民都市は作業員の奮闘を無にするような危機に何度も襲われ、次々と崩壊する。この殖民都市の崩壊は、数億年前に四散した火星と木星の間の第五の惑星アイララの種族が、諸惑星に突き刺さった破片の回収のために引き起こされたものだった。
一方、地球では自分たちがアイララの子孫であることに気づいた一部の人間が活動を始めて……。


光瀬龍の作品に共通するのは、なにをしてもどうしようもないという、一種の虚無感だと思う。仏教の思想を日本SFに最初に取り入れたのも光瀬龍ということ。これは光瀬龍ジュブナイルを読んでいても感じてしまうのだから、作者自身、相当に根の深い問題だったのだろう。
共鳴する。


(久)