中村融編『地球の静止する日』

地球の静止する日―SF映画原作傑作選 (創元SF文庫)

地球の静止する日―SF映画原作傑作選 (創元SF文庫)


SF映画の原作を集めたアンソロジー。収録作は以下。


レイ・ブラッドベリ「趣味の問題
「ちくしょう、友好的だぞ。友好的な蜘蛛だ!」
紳士的だが恐ろしい姿のエイリアンにとまどう探検隊。暗示される結末は、少し悲しい。


ウォード・ムーア「ロト」
全面核戦争の始まったアメリカ。その下でもうひとつの戦争、「生き延びるための戦争」を繰り広げる父親の話。あらすじだけ聞くとシュワちゃんのような父親を想像してしまうが、実際は佐野史郎。冷静だが執拗。ナマイキな息子や頭の悪い妻に対しては(心の中で!)見下し馬鹿にするのだけど、自分に似ている(と信じる)娘に対しては気持ちが悪いほど甘く、娘の体つきを舐めるように見る箇所もあったりで、ゾワーっとなったね。映画の邦題が『性本能と原爆戦』というのは、未見ながら想像がたくましくなってしまう。


シオドア・スタージョン「殺人ブルドーザー」
意思を持ったブルドーザーと作業員が戦う話。意思といっても、ブルトーザーが持ったのは「人間を殺す」という単純な、だけど徹頭徹尾一貫した鉄の意志。だからすごい冷酷。キャタピラで轢き殺すし、自分で給油もしちゃう。
ようするにスピルバーグの『激突』のブルトーザー版。それに加わる人間模様こそ読みどころか。


ドナルド・A・ウォルハイム『擬態』
映画『ミミック』の原作。
都市の片隅にひっそりと住まう黒マントの怪しい男。ある晩、奇妙な叫び声して……。
都市伝説風の作品だが、ホラーというかもっと哲学的な話だったよ。


ハリイ・ベイツ「主人への告別」
映画『地球の静止する日』原作。
ある日、宇宙船がやってきた。中から出てきたのは巨大なロボと威厳ある男。いろいろあって、ロボは博物館に入れられてしまう。
そのロボ、夜になって人がいなくなるとやおら動きはじめるのだけど、その目的は…。


ロバート・A・ハインライン『月世界征服』
おじさんたちが月に行く話。


(久)