城平京『名探偵に薔薇を』

はじめましてFです。今週から日曜の担当をします。

私も書くけど? と尋ねた所、

「え? いいよ」

との返答。

……。
どっちの意味で「いいよ」なのかは聞かないでおきます。嗚呼、素晴らしき哉、日本語。

今週の一冊。

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)

名探偵に薔薇を (創元推理文庫)

ジャンルはミステリ……なんですが、あんまりトリック部分には興味がなかったりします。ちょっとズルがありますし。
個人的には、ホワイダニッド――何故、それを為したのか――の方に心惹かれるんですよね。
正気と狂気は地続きってのが私的な意見でして、じょじょに蓄積していく殺意とか、置かれた境遇に対する必死の抵抗とか、自縄自縛で凶行に走る様とか、悶々と思考を重ねて独善的な発想に辿り着く様とか、そういう推移が好きなんですよ。
んで、この作品はその描き方が秀逸。
犯人の心理と、犯行が見事に合致していて隙がない。更に素晴らしいのは探偵役の心理も丹念に描かれていること。
事件を探偵が解決すべき題材として描く前に、ひとつの悲劇として描いているんですよ。だから、関係者は残らず体に、心に傷を負う。探偵も例外ではない。そういうのすごい好き。ただし、悲劇が好きなんじゃんくてその平等さが好き。
たぶん、ミステリとしては、未完成。でも物語としては完成品。そんな作品です。お勧めです。

蛇足
・この間、池袋リブロで、「未来の古典フェア」で平置きになってたから、入手は比較的容易かも。
・ちなみに作者さんは、少年ガンガンで「スパイラル―推理の絆 (15) (ガンガンコミックス)」の原作書いてた人。
・現在、「ヴァンパイア十字界 1 (ガンガンコミックス)」とゆー吸血鬼vs人類vs宇宙人の三つ巴ものの原作やってます。
・来月、スパイラル・アライヴ 1 (ガンガンコミックス)の連載がやっと再開するらしいです。……長かった。
・正直、原作はどーでもいいから、小説書いて下さい……。

 (F)